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国・地方自治体の婚活支援事業
経済ジャーナリストの荻原博子さんは次のように話している。
『公務員の発想には本当にあきれる。出会いの少なさが未婚率上昇を招いているのではなく、経済的な問題や将来への不安が恋愛や結婚を遠ざけている。本当は、そのこと気づいているのに重要な一手を打たない。フランスは婚外子を認め、母子家庭に対する待遇や手当てを良くし、学費を無料にするなど実質的な子育て支援に取り組むことで、出生率を回復させ少子化対策の基盤を作った。ところが日本は、子どもの存在が負担になり、子どもをもつと不幸になる国となった。
派遣法を見直したかと思えば庶民の首を絞める結果となり、その一方では少子化対策に金をばら撒いている。やっていることがアベコベだ』
厚生労働省が発表した「2012年版・少子化社会対策白書」によると、確かに「出会いがない」ということよりも「経済的な余裕がないから結婚しない」といった意見が目立っている。
これは、全国29歳~39歳の独身男女7000人を対象にした調査だが、経済的に余裕がない人ほど恋愛や結婚に興味を示さない傾向が強かったとのこと。7000人のうち、2016人(28.8%)は見込んで恋人がいない男女。
この男女に「恋人が欲しいか?」と聞いたところ、「ほしくない」と答えたのは758人(37.6%)だったという。さらに、「交際したことがない」と答えた男女が2016中、1014人(50.8%)いたことも分かり、将来的な少子化や未婚率の増加は悪化することが容易に予測できる。
政府が2013年度に予算を見直した際、「地域における少子化対策」へ費やす費用として30.1億円を予算に組み込み、婚活支援事業や少子化対策に前向きな地方自治体に資金を配った。
交付する資金の上限は、都道府県6,000万円。政令指定都市や中核市、特別区に対しては2,000万円、市区町村は800万円(2013年)。この資金をもとに各地の地方自治体が婚活イベントを開催し、都道府県や市区町村はお見合い相手紹介サービスの取り組みなどに資金を費やした。
2013年の収支表を確認すると、244の市区町村が資金の交付を受けており、2014年の予算に関しても同様に、30.1億円が組み込まれている。交付する資金の上限が見直され、都道府県7,500万円。政令指定都市や中核市、特別区に対しては2,500万円、市区町村は100万円まで引き上げられた(2014年)
こんな莫大な金額が動いていたことを、あなたはご存知だっただろうか。
たった2年で60億円以上の資金が費やされていたわけだ。
しかし、厚生労働省の調査結果では、年収が低い人ほど「恋人はほしくない」と答えているわけで、いくら婚活支援事業に力を注いだところで雇用率の問題や賃金の底上げなど経済的な悩みが解消されない限り、未婚率の増加が防げるとは思えないのである。それでも、政府の婚活支援事業は止まる気配がない。事実、地方自治体の婚活イベントがきっかけで出会い、結婚したケースもあるが少なすぎる。
自治体の婚活サービスで結婚できたという声が飛び交うわけでもないし、メディアで大々的に注目されているわけでもない。成婚数〇〇人達成!といった文言も見かけるが、目的はカップルを作ることではないはず。シンプルに、政府の婚活支援事業がきっかけで何人が結婚したのかが重要。
もちろん、まったく役立っていないとは言い切れない。だが、60.2億円分の“見返り”はあったのだろうかと疑問に思う。いくら金を注ぎ込んでもダメなら、どの会社だって事業の在り方を見直すし、あまりにも弱弱しければそのプロジェクトは消される。
そうしたことを考えると政府の婚活支援事業は、おそらく一企業なら倒産レベルの成果。それでも、政府は婚活支援事業に金を注ぐ。そして、また金は消え、新しい資金が注ぎ込まれる。
誤解しないでほしいが、政府の婚活支援事業を完全否定するつもりはない。ただ、もっと為すべきことや改善策を真剣に話し合う努力が必要なのでは?と思ってしまうのだ。60.2億円を結婚適齢期と呼ばれる25歳~30歳男性の平均年収に換算すると、約1720人分。誰のための婚活支援事業なのかを、今一度、真剣に考えてほしいと願う。
たとえば、「どんな婚活支援が望ましいか」と独身者に一斉アンケートをとるところから始めてみたり、本当に必要とされる婚活サービスに取り組んでみたり、確実に一歩ずつ進むことも大切。
解決策は、きっとあるはずだ!頑張れ、ニッポン。
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