32歳、独身。
結婚相談所で知り合ったS原さんと何度もデートを重ねています。
「明日2時に、○○公園で会いましょう」
それだけが書かれたメールが昨日届きました。相手はもちろんS原さんです。私は今、○○公園のベンチに座っています。この公園は、S原さんと何度もデートを重ねた思い入れのある公園です。初めてお会いした喫茶店も、初めてデートをした水族館も、この公園の目と鼻の先にあります。
何度もお会いすると、相手のいいところだけでなく、悪いところも見えてきます。でも他人と生活をするということは、楽しいことばかりではありません。楽しさと辛さは常に共にあるもの。経験したことはないけど、結婚生活もきっと例外ではないのでは。
結婚相談所に足を踏み入れて、私は自分の生き方をゆっくりと見つめることができました。私はいつも、自分のことで精一杯でした。仕事にしても日々の暮らしにしても、いつも自分のことを最優先していました。
S原さんは、家族、周りの人みんなを思いやる心をもった方です。少しマニアックで、説明しだしたら止まらないクセはありますが、ユーモアを忘れない方です。そして何よりも、自分自身を大切にされる方です。
「待て待てー!」
男性の声と嬉しそうに笑う子供の声に、私ははっと我に返りました。ちょっと、ぼーっと今までのことを考えすぎてしまいました。昨日S原さんからメールをもらってから、うまく眠れていないのです。
私は多分、今日ここでプロポーズをされるのではないかと思っています。
公園の噴水近くに、小さな子供をベビーカーに乗せたお母さんと、3歳くらいの男の子を追っかけまわしているお父さんらしき人がいます。絵に描いたような幸せな家族の風景です。
今までは、「家族をもつこと」は全く考えられませんでした。今は「S原さんと自分の未来」を重ね合わせてみています。
「お待たせしました!」
ふと後ろを見ると、S原さんが息を切らして立っていました。
「走ってきたんですか? まだ2時まで30分もありますよ」
「もう1時半ですか? 急がないと!」
S原さんは息も絶え絶えに、私の手を取り歩き出しました。
「S原さん、どちらに行くんですか?」
「結婚相談所ですよ」S原さんは時計を見ています。「ギリギリかな?」
「なにがギリギリなんですか?」
私はわけがわからず、ただS原さんに引っ張られて歩いていました。
「結婚相談所は、今日は2時半までなんですよ」
S原さんは真剣な顔をしています。
「結婚相談所に、何をしに行くのですか?」
「円満退会ですよ」
私は、S原さんのその言葉を聞いて足を止めました。
「S原さん」
「はい」
「…いつも話が長いくせに肝心なときに説明しないなんて、ずるいです」
S原さんは、「すみません」と頭を下げました。
「僕と結婚してください」
「はい」
思い描くような、ロマンチックなプロポーズではなかったけど、私たちらしいかな? と思います。
32歳、独身。ついに、結婚相談所で人生のパートナーと出会うことができました!
第十話に続く・・・
▼【婚活物語】32歳独身OLの婚活ストーリー 全10話
【第一話】32歳、独女。婚活パーティに行きましたが失敗しました
【第二話】32歳、独女。結婚相談所の資料を見てやる気が出ました
【第四話】32歳、独女。結婚相談所で知り合った異性と会いました
【第六話】32歳、独女。結婚相談所で出会った相手と二度目のデート
【第八話】32歳、独女。婚活相手とデートを重ねて毎日幸せです
【第十話(最終話)】あれから3年、私は毎日楽しく暮らしています
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